【境界確定測量】隣地の所有者の住所がわからない

今回は、境界確定測量をする上で、ネックになること
隣地の所有者の住所がわからない場合にどうするのかというお話します。

今回の動画を見ていただければ、隣地の人が住所不明の場合の調査、対処方法がわかりますので、
最後までご覧ください。

 

それでは、測量の依頼を受けたところからお話します。

まず、隣地の土地の登記情報を調査して、登記に記載されている住所を確認します。

測量する近隣に住んでいる隣地の所有者にあいさつに回ります。
もちろんそこに住んでいて、ご挨拶ができれば問題有りません。

空き家になっていたり留守がちな場合は、
近隣の人に世間話をしながら聞いてみるというところです。

「〇〇様に、測量のご挨拶をしたいのですが、日中はいらっしゃらないですか」とか
「〇〇様、今こちらにお住まいですか?」とか
質問をして情報を入手します。

「〇〇さん、ひとり暮らしで朝は7時くらいに出ていって、夜9時過ぎに帰ってくる」とか
「水曜日は休みみたいで家にいる」
「今、施設に入っていて、息子さんが月に一回くらい家の掃除に来ています」
「引っ越ししてどこどこに住んでいます」
「〇〇さん半年前に亡くなられました。親族が近くに住んでます。」
とかいろいろ情報をお聞きすることができます。

近所のお付き合いをしていた人だと、引っ越しをしても住所とか連絡先を周りの人にお伝えしていること多いです。

あとは、駐車場であったり、資材置き場であったり、隣地がアパートであったり、何らかに利用されていれば、
その管理している不動産業者さんなどにお願いをして管理者を経由して連絡をとることもできます。

まずは、隣地の人のご自宅にあいさつに伺う

それと同時にするのが、隣地の人の登記の住所が離れた場所の場合です。
その場合には、登記された住所にレターパックで、測量のご挨拶のお手紙を送付します。
レターパックの場合は、追跡できますので、
隣地の所有者さんに測量の挨拶文を送って、
受け取っったのか、
転送されて受け取ったのか、
あるは宛先不明で戻って来るのか

ここまで、調査して隣地の所有者さんの住所、連絡先がわからないという場合には、
公的機関から調査していくということになります。

まず、固定資産税台帳からの調査です。
これは結構厳しいです。
以前は、結構ゆるくて市区町村によって土地家屋調査士の職権で調査できたんですけど、
固定資産税というのは厳密な個人情報ですから、
最近は、所有者の委任状を添付してください。と言われます。

所有者不明土地の問題で、国土調査に際して固定資産税の調査が認められるようになります。
この先、固定資産税台帳の調査がしやすくなる可能性はありますが、今のところは固定資産税から調べるのは結構、きびしいです。

他に不動産を所有していた経緯がないか調べてみる。
その住所地の不動産の情報を調べてみる
共同担保目録があれば、他の所有不動産の登記情報を調べる
場合によっては、法務局でその所有者名で、他に所有不動産がないか検索してもらう。
他の不動産を調べることで、他の不動産では最新の住所を登記している可能性はあります。

住民票の記録から調べるという方法です。
土地家屋調査士の場合は、職務上必要な場合は住民票の記録を調査することができます。
ただし、この方法はできるだけ使いたくないというところです。
第三者が住民票を請求した場合には、その住民票の本人に通知する制度があります。
私が、隣地の人の住民票を市役所に請求すると、その隣地の人に土地家屋調査士 杉山賢司が、市役所があなたの住民票を取得しましたという通知をします。
通知するのは、あらかじめ市役所に通知を希望した人だけなんですけれども、
住民票を勝手に取得された人にとっては、かなり気分は悪いと思うんですよね。
そのあとの境界確認に影響する可能性もあります。
なので、できるだけ住民票による住所の追跡というのは、避けたいところではあります。

また、住民票は5年間しか市区町村の役所で保管しません。
5年以上前に他の市区町村に住所を移転している場合には、
住民票による調査ができません。

住民票の請求については、土地家屋調査士会で厳格に管理されています。
住民票の請求用紙の控えも保管しておく義務があります。
住民票の請求用紙は、土地家屋調査士会で購入するんですけど、購入は必ず1冊のみで、その際には、前に使用した使用済みの請求用紙を提出しないと購入できません。
そして使用済みの請求用紙は、正しく記入されているか、不正に使用されていないかなど厳しくチェックされます。
私達、土地家屋調査士は年に一回、土地家屋調査士会に誰の住民票をどんな理由で請求したか報告しています。

この住民票の請求については、個人情報を見るということもあって、本人への通知制度と土地家屋調査士会で厳格にチェックされているということがあります。
住民票を職務上の範囲を超えて不正に請求することはないんですけど、あらぬ疑いをかけられても非常に面倒くさいので、住民票の調査はできるだけしないようにしています。

水道料金から調べる
これは私はやったことはなくて、人から聞いた話です。
水道局に行って、水道の利用状況を確認したいということで、書類の閲覧をする。
そして住所を確認するという話を聞いたことがあります。
確かに公共料金の管理者は、現住所を把握している可能性が高いです。
ただ本人になりすまして、これやると法的にはかなりグレーだなという感じがします。
私の場合は、この先もこの手法は使いませんが、こういう話を聞いたことがあるということでお話をしました。

ここからは所有者の住所が特定できない場合の対処方法です。

一通り調べて、所有者の所在の特定ができない場合には、目的が分筆や地積更正の登記をすることが目的であれば、
法務局に事前に相談のうえ申請するという方法も考えられます。

境界が明確である場合、既存の図面があり、図面の通り境界標が設置されていて、既存の図面と誤差が少なければ、
分筆や地積更正の登記ができる可能性はあります。

過去にこのパターンで分筆をしたケースはいくつかありますが、法務局を納得させられるだけの資料を提出できるかが鍵となります。

あとは、筆界特定制度を利用するということになります。
今回のように隣地所有者の所在が不明な場合
隣地の所有者が境界立会に応じない場合
また、境界の主張が相違する場合には
法務局に筆界特定制度を申請します。

法務局の登記官が筆界を定めてくれる制度があります。

期間として1年程度はかかること、費用がかなりかかりますので、
期間と費用をかけられるということであれば筆界特定制度を利用するのも良いと思います。

隣地の所有者の住所が特定できない場合の調査方法、対処法についてお話をしまいした。

参考にしていただければ幸いです。