【境界確定測量】についてあれこれ話す
土地家屋調査士のメインの業務と言っていいのが、土地の境界線の測量。
「境界確定測量」です。
この「境界確定測量」を私がどのように考えて行っているかをお話します。
ぜひ、最後までご覧ください。
今回のトピックです。
1つ目は、土地の境界紛争は、多くの場合、境界線を争っているわけではない
2つ目は、測量は依頼者に見える部分を全力でやる
3つ目は、越境物を確認しながら測量する
4つ目は、幅員、隅切り、間口、面積、数字が重要
5つ目は、任意座標の座標原点はX=200、Y=500
1つ目は、土地の境界紛争は、多くの場合、境界線を争っているわけではない
測量の依頼者とお隣の人との人間関係が大きく影響します。
境界紛争の原因は、境界線そのものではなく感情のもつれが境界争いという形になって表面に現れることが多いのです。
例えば、人間関係が悪い場合に、境界について理不尽な主張をしたり、金銭の要求をされたり、そもそも境界立会に応じないということが起こります。
以前、測量をしたところで昔からの私道に接する宅地がありました。
その私道には、長い歴史があったのです。
結局は、私道所有者10人の境界を取りまとめるのに1年以上もの期間を要した事例です。
その私道の経緯を遡ると、昔は砂利道で私道の端にはドブ川が流れていたようです。
大雨が降るとドブ川が溢れる。
なので側溝を設けて、近くの水路に流すように改良する。
また、砂利道の下にある下水管が破損してしまうことがあったのです。
下水管を修復して、砂利をアスファルトで舗装する。
建築基準法上の道路ではなかったので、市役所に協定道路の許可を受けるということもありました。
このように、何か問題が起こるたびに近隣の人で費用を出し合い協力をしあい解決をしてきたのです。
測量に入るのに、近隣の人に挨拶をすると何か様子がおかしい。
話を聞くと、どうやら、その依頼人はそれらの問題に協力をしてこなかったらしい。
協定道路の許可を受けるのにも、その依頼人の家の手前までの許可にとどめたのでした。
当然に、近隣の人たちは協力をしません。
それどころか、理不尽な主張、金銭の要求、なかなか立会に応じない人もいて難航を極めました。
結局は、1年以上も境界線を取りまとめるのにかかったのです。
こういった事例のように、境界線をそのもの争うというよりも、近隣の人との感情の問題が大きいということもあるのです。
2つ目は、測量は依頼者に見える部分を全力でやる
測量の仕事というのは、見える部分と見えない部分があります。
実は、ほとんどの部分というのは依頼者からは見えていない。
例えば、ある程度広い範囲で測定して近隣の既にある図面との整合性や面積関係を確認する。
あるいは、測量の精度管理をしっかりと誤差の少ない測量をする。
もちろん、そういった依頼人から見えない部分も手を抜くことなく行うのは当然のことです。
しかしながら、見えない部分が多いために、依頼人からすると「測量って高いな、何でこんな時間かかるんだろう」と思うこともあるでしょう。
一方で、依頼人から見える部分というのは、測量全体の仕事からするとほんの僅かなのです。
測量図面、納品書類、設置された境界標識が、依頼人から見える部分とことになるでしょう。
見える部分がほんの僅かであるならば、手を抜くことなく全力でやるのが私の考えです。
測量図面は、分かりやすさに拘ります。
境界の写真を付けたり、測量する土地の地番、境界線は文字や線の太さ色を変えてわかりやすくする。
納品書類は、公図、案内図、登記情報、境界確認書などの資料を1冊のファイルにまとめて分かりやすくする。
中でも、一番拘るのが境界標の設置です。
例えば、コンクリート杭であれば、下げ振りを使って垂直にする、十字線は境界線の方向にしっかり合わせる、杭の高さは歩くときにつまずいて邪魔にならないなおかつ埋まってしまい分からなくならない高さに設置をします。
境界杭の設置については、とにかく美しさに拘りを持っています。
見える部分に手を抜かずに全力でやることで、この調査士は仕事ができる、丁寧、信頼できるという印象になるものです。
下着にうんこ付いてても見えないけど、ジャケットにうんこ付いてたらヤバいでしょ。
最後に念を押しますが、もちろん見えない部分も手を抜かずにしっかりと見える部分は拘りを持って全力でやるということです。
3つ目は、越境物を確認しながら測量する
土地の売買をする上では、隣からの越境物の確認を求められることが殆どです。
隣の人の建物の屋根の庇、雨樋、エアコンの室外機、ブロック塀、植栽、あるいは電線で越境していそうなものは、測定をしておく必要があります。
越境物があれば、対象物を移動したり撤去したりして越境の解消をしてもらう等の交渉を不動産業者さんが行います。
あるいは「越境に関する覚書」を取り交わす措置を不動産業者さんが手配することもあるでしょう。
ただし、越境物があるのかないのか、何センチ越境しているのかといった状況は、土地家屋調査士が測量しなければ判断できないのです。
そのために土地の売却を前提とする測量では、越境物を測定することが必ず求められるのです。
4つ目は、幅員、隅切り、間口、面積、数字が重要
測量をするあるいは分筆をする上では、面積や辺長(境界の点間の距離)が重要になることがあります。
なぜ重要かと言うと、関係する法律のことと売却するときの販売することからの2つの要素から重要なのです。
まず、関係法令のことを話します。
例えば、測量をする前の道路が位置指定道路の場合であれば、道路の幅はもちろん角地であれば隅切りの長さも位置指定道路の許可を受けた図面と一致している必要があります。
隅切りの長さが2.00mであれば、2.00mでなければ問題が生じます。
1.98mあるいは2.05mと隅切りの長さが一致しない場合には、後に建築をするための確認を受ける際に問題になることが考えられるでしょう。
位置指定道路の数値と境界の数値が一致していなければ、場合によっては数値を一致させるために、隣地との交渉する、あるいは分筆登記が必要になることも考えられます。
つぎに、販売についてです。
宅地分譲地では、1区画を100㎡で分譲するというのは、よく見受けられます。
分譲して20年後に確定測量をする場合、再度測定した結果99.99㎡でした。
100.00㎡と99.99㎡は、測量で言えば誤差の範囲内です。
しかしながら、土地を販売するうえで100.00㎡と99.99㎡は、まったく意味が違うということです。
同じように、路地状になっているいわゆる旗竿地で、道路に面している間口が3.00mと2.99mとでは、意味が違います。
境界確定をする上でも、分筆登記をする上でも、必ず守らなければならない数字というのはあります。
特に、私道で幅が4mあるいは道路に2mしか接していないという場合の測量というのは結構緊張します。
紹介した以外にも、法令上あるいは販売上、確保する数字は場合によっては隣地との交渉も必要になろうかと思います。
5つ目は、任意座標の座標原点はX=200、Y=500
測量というのは、X軸とY軸があって、XいくつYいくつという座標値を使って計算をしています。
その測量の現場ごとに、座標値を定めて測量するのを任意座標といいます。
逆に、公共に管理されている座標値を公共座標あるいは世界測地系というのです。
任意座標の場合は、現場ごとに自由に座標値を設定します。
基準の点T1ということが多いでしょう。
そのT1基準の座標値をX=200、Y=200とかX=500、Y=500あるいはX=1000、Y=1000と定める。
ここで注意するのは、座標値がプラスの値になるように設定するということです。
例えば、X=0.00、Y=0.00にしてしまうと測量したポイントの座標値が、マイナスになったり、プラスになったりします。
座標値がマイナスとプラスが混在すると、見辛いしPCなど入力もし辛くなります。
なので、任意座標ではマイナスになるような設定をしないようにします。
さらに、私の場合は他の測量で使っている座標値とダブらないようにします。
すでに測量している近くの座標値をPCに入力します。
なぜかと言うと、基準の座標値が同じ値を使っているとPCの画面上で、測量したポイントが重なってしまうとPC作業がやりづらくなるからです。
近くで測量した基準の座標値がX=500、Y=500の場合に自身が測量した座標値とダブった場合。
Xの座標値に計算しやすい数字、例えば1000を足してX=1500で入力をすることもあるでしょう。
私の場合は、基準になる座標値をX=200、Y=500にすることで、ほとんど他で測量した座標値とダブることはありません。
私の場合は、X=200、Y=500で座標値もマイナスにならずに、他の測量と座標がかぶらないように設定をします。
クロージング
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