AIが進化しても土地家屋調査士は残るの?

 

土地家屋調査士の仕事が、AIの急速な進化によってなくなると思われるかもしれません。

しかし、それは本当でしょうか?実は、AIの進化がホワイトカラーの多くの仕事に影響を与えることは確かです。

堀江貴文さんも、ChatGPTの登場によって「ホワイトカラーの9割以上の仕事がなくなると言っていました。

 

シンギュラリティ、すなわち人工知能が人間の知能を超える時点が、2045年と言われていました。

しかし、AIの急速な進化により、その時期が2025年に早まるとも言われています。

では、土地家屋調査士の仕事はどうなるのでしょうか?

 

土地家屋調査士の仕事がなくなるのか?

それともなくならないのか?

結論から言うと、土地家屋調査士の仕事はAIの影響を受けにくいのです。

この動画を観ていただければ、土地家屋調査士の仕事が残る理由や、影響が少ない理由がわかります。

ぜひ最後までご覧ください。

 

 

1.AI は複雑なコミュニケーションが苦手

土地の境界争いの多くは、実は境界線そのものを争っているわけではありません。

これまでの隣の人との人間関係が、境界争いという形で表に出てくることが多いのです。

例えば、長年にわたって隣人同士のいざこざがある中で、相続で土地を分けるために測量が必要になったケースがあります。

 

そこで土地家屋調査士が、隣地の所有者に境界線の立会を求めたところ、境界立会に応じない。

あるいは、理不尽な主張をしてくるということが起こります。

もちろん、境界線についての根拠を説明することも大切です。

しかし、境界の説明以上に、相手の感情に寄り添って話を十分に聴いて、相手の感情を吐き出してもらうことが重要なのです。

依頼者である相続人と一緒にお願いに行くなどの別のアプローチが効果的なことが多くあります。

 

また、隣地の所有者には相手を困らせて楽しむようなクレーマーもいます。

隣地の建築を妨害したいという境界とは違う目的もあるでしょう。

自分の土地を買い取ってほしいという意図を持った隣人もいます。

 

ときに感情に寄り添う複雑なコミュニケーションを感情のないAIに任せることができるでしょうか。

私は、人が介在しなければ解決できない問題だと考えます。

 

 

 

 

2.AIは定型化できない作業が苦手

 

土地家屋調査士の業務の中には、AI化されていく部分もあると考えます。

例えば、AIの質問に回答をしていくことで、登記申請書類を自動的に作成することができます。そして、AIが作成した書類に住民票や印鑑証明書などの必要書類を添付して申請することで、登記ができるようになることも考えられます。

測量や複雑な図面作成を伴わない申請、地目変更登記や建物滅失登記、土地の合筆登記であれば、一般の人でも簡単に登記申請ができるようになるでしょう。

 

ただし、現地の測量や複雑な図面の作成が必要になる業務については、土地家屋調査士が介在することになると思います。

 

仮に測量をするロボットを作ったとしても、画像認識で地表に出ている境界杭、ブロック塀、生け垣、建物、電柱、道路標識を認識して測量ロボットが測定することは可能かもしれませんが、測量現場ではその都度判断を求められる仕事が多く、AI化が難しいと思われます。

 

例えば、境界杭の設置作業です。境界杭を設置する際に穴を掘ると、木の根っこ、コンクリートのガラ、排水管・水道管・ガス管などが出てきます。

木の根は切除して、コンクリートのガラを取り除く必要があり、排水管・水道管・ガス管は破損しないように注意しなければなりません。

また、境界標を探索する場面では、既存の図面や現地の状況から境界杭がありそうな位置に目星をつけて穴を掘って探索します。

境界杭が埋まっている深さもまちまちで、地表面から2、3cmの土を払う程度で出てくることもあれば、1メートル以上下に埋まっていることもあります。

境界が設置された当時の地盤面の高さはどの程度だったか、盛り土をされた土地なのかを想像しながら境界杭を探索します。

 

つまり、測量現場での作業は、経験からくる勘に頼る場面も多く、定型化できない内容が多いため、AI化は難しいと言えるでしょう。

 

 

 

3.AI でこれから起こる未来

これから起こることは、AIの発展によって多くの人が職を追われていくでしょう。

そして職を追われた人たちが、AIでなくならない職業へと移っていくでしょう。

AIでなくならない職業に人が溢れていく、過剰供給になっていく、価格競争が激しくなっていく、そして崩壊します。

では、結局、土地家屋調査士も競争が激しくなり、最終的には厳しくなるのではないかと思うかもしれません。

ここまでの話を聞いて、皆さんもそう感じるかもしれません。

 

ところが、土地家屋調査士はそこまで競争は激しくなりません。

なぜかと言うと、参入障壁の高さがあるからです。

 

①資格試験があります。

年に1回の試験の合格率は10%前後と難関です。

2022年の試験では、4,404人の受験者に対して424人が合格しています。

おそらくAIの影響で、受験者数は増えることが予想されます。

しかし、受験者が仮に2倍、3倍になったとしても、合格者も比例して2倍、3倍になるとは考えにくいです。

なぜなら、過去の土地家屋調査士試験は、受験者数の減少から徐々に合格率が高くなっていったという経緯があるからです。

合格率が3%くらいの時代もあったし、私が合格した平成10年は6%くらいであったと記憶しています。

土地家屋調査士の試験は、合格率よりも合格者の人数を重視しているとも考えられます。

そう考えれば、受験者数が2倍、3倍になったとしても、合格率が下がることで合格者数が増えないと考えます。

 

②開業費用です。

土地家屋調査士として開業するためには、初期投資が必要です。

測量ソフト、測量道具、測量機械、登録費用などでおおよそ300万円くらいは必要になるでしょう。

一般的な開業費用としては、安いほうだと思われるかもしれません。

しかし、税理士、司法書士、社会保険労務士といった士業は、パソコン1台あれば開業できることが多いのです。

もちろん測量機械はリースを使うこともできますが、精神的な負担は大きいでしょう。

しかし、多額の開業費用がかかるということは、土地家屋調査士が人気にならない理由でもあります。

 

③実務経験です。

土地家屋調査士として開業するためには、実務経験が必要です。

測量の技術は、机上で学んだだけでは身につきません。

畳の上で、水泳の練習をするようなもので、実際に経験しなければ上達はしないものです。開業するためには、3年くらいは実務経験を積みたいものです。

他の士業では、即独と言って、実務経験を積まずに独立するという話を聞くことがあります。主に、行政書士、司法書士、弁護士で即独して、なおかつ大成功している人も多いようです。土地家屋調査士の場合、建物の登記申請だけであれば実務経験がなくても対応できるでしょう。

まれに、建物の登記を専門にしている土地家屋調査士もいます。

しかし、都心部ならば建物登記専門でも成り立つこともありますが、都心以外では難しいでしょう。

測量の場合は、実務経験が必要です。

 

資格試験、開業費用、実務経験といったお話をしてきました。土地家屋調査士の場合、参入障壁が高いため、AI化が進んでも競争が激しくなることはないと考えられます。

 

これまで土地家屋調査士の仕事はなくならない、AIの影響を受けにくいという話をしてきました。

しかし正直なところ、未来を確実に予測するのは不可能です。

今回、私が話したことは、もしかしたら外れるかもしれません。

みなさんも将来の不安はあると思います。

 

最後に堀江貴文さんの言葉を借りて終わりたいと思います。

「未来を恐れず・過去に執着せず・今を生きろ」

 

この言葉には、どんな時代であっても、どんな変化があっても、過去に囚われず、未来を恐れず、今を精一杯生きることが大切だという意味が込められています。

土地家屋調査士に限らず、どんな職業でも、AIの進化によって変化に対応しなければならない時代が来るかもしれません。

しかし、それを恐れることなく、今を全力で生きていくことが大切です。

 

土地家屋調査士も、時代の変化に柔軟に対応し、独自の価値を見出していくことが求められるでしょう。AIが発展し、競争が激しくなっても、資格試験や開業費用、実務経験などの高い参入障壁があることを考慮すれば、土地家屋調査士はまだまだこれからの時代に活躍できる職業と言えるでしょう。

 

最後に、これから土地家屋調査士を目指す方々に向けて、一言励ましの言葉を贈りたいと思います。

「自分に自信を持ち、努力を惜しまず、時代の変化に立ち向かってください。未来は、今を生き抜くあなた方の手によって切り開かれるでしょう。」