分譲マンションの土地の境界立会確認について考えてみた

土地の境界の立会確認をするにあたり、
一般の境界立会とは少し事情が違うのが分譲(区分)マンションとの境界立会です。
予想外に時間がかかりヒヤヒヤすることもあります。

今回は、このマンションとの境界立会について深堀りしていきます。
不動産の売買に関わる人、マンションの関係者の人、土地家屋調査士の仕事に興味がある人には役立つ情報です。
マンションの特徴を知ることで、境界立会をスムーズに行うことが出来ます。
ぜひ最後までご覧ください。

どーも(^^)
開業20年、土地家屋調査士の杉山です。
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それでは境界立会確認のポイント3つにまとめてお話します。
1つ目は、マンションの関係人
2つ目は、マンションの境界立会の問題点や特徴
3つ目は、マンション管理組合との境界立会までの流れ

1つ目は、マンションの関係人
まず、マンションの入口の付近に、管理事務所があります。
つぎに、マンションの管理を委託している管理会社。
そして、マンションの所有者で構成されている管理組合があります。

最終的には、管理組合の理事長さんと境界確認をして、境界確認書に署名捺印をいただくことになります。
そのためには、マンションの構造を理解することが重要です。

①管理事務所
管理事務所に常駐している管理人は、管理会社の従業員です。
大きいマンションであれば、8時から15時のように毎日、管理人がいることもあります。
ただし、中規模、小規模のマンションの場合は、管理人が常駐していないこともありますし、
週に2,3回のゴミの収集日の午前中だけ、管理人が勤務していることが多いです。

管理事務所の管理人の存在は重要です。
測量のご挨拶文などを掲示板に貼ってもらったり、そのマンションの情報を収集します。
現場に入るときには、必ずあいさつをして仲良くなっておく、勤務する曜日や可能であれば理事長の部屋番号と名前を聞ければベストです。
現場に行ったときに、管理人が不在であればポストに測量の案内文や手紙を入れておくようにします。

②管理会社
マンションの所有者が管理会社に管理を委託しているか、
あるいはマンションの所有者が自主管理をしているかです。
ほとんどの場合は、管理会社に委託しています。
マンションの入口付近に、管理会社名と連絡先の記載されたプレートが貼ってあります。
管理会社は、マンションの管理組合との連絡を取る上で非常に重要な存在です。

測量に入るときには、測量に入る旨の電話を入れて、あいさつをします。
担当者の名前を聞いて、測量の挨拶文、名刺、粗品をいれて郵送します。
マンションの住人からすると、境界立会などわずらわしいことは、管理会社に言ってくれという感覚なのです。
境界立会のときにも、管理会社に言えばほとんどの場合は、管理会社の担当者が積極的で丁寧に対応してくれます。
管理組合の理事長との連絡、境界立会の日程の調整は、管理会社を通して行うのが通例です。

③管理組合
マンションの各部屋の所有者は、自動的に管理組合の構成員ということになります。
管理組合の理事は、輪番制で行われるのがほとんどです。
今年は101号室、201号室、301号室・・・・という感じで理事の仕事をして、翌年は102号室、202号室、302号室・・・といった感じでしょうか。

管理組合の理事の中から1名理事長が選任されます。
その理事長が最終のゴール(本丸)です。
理事長さんと境界確認をして、境界確認書に署名と捺印をいただければ完了となります。

ただし、測量に入る時点では、どの部屋の誰が理事長なのかは、わかりません。
通常は管理組合と直接コンタクトを取ることができません。
まれに管理組合専用のポストが用意されていることがあります。
その場合はポストに測量の案内文や手紙を入れることができます。
ただし、管理組合専用のポストというのは、ないことのほうが多いです。

なので、管理事務所、管理会社の存在というのが重要なのです。
管理事務所、管理会社から丁寧にアプローチしていって、
最終的に、管理組合の理事長さんにつないでいくということになります。

2つ目は、マンションの境界立会の問題点や特徴

①管理組合自体が機能していないことがあります。
区分所有法で言えば、所有者は管理組合の構成員となるとされています。
法律上は、管理組合というのは必ず存在することになります。
しかし、現実には特に築年数の古いマンションでは、管理組合が機能してなくて、
特に理事長という人もいないと言われたこともあります。
売買の当事者と相談して、マンション所有者のうち、できるだけ多くの境界確認書を取得するということになって
結果的に区分所有者全員の承諾をもらったということもありました。

②マンションの所有者は土地の境界について無関心なことが多い。
分譲マンションの場合は、土地の権利は100部屋あればザックリ100分の1づつの権利ということです。
もう少し細かく言うと、土地の所有権は部屋の床面積の割合であったり、あるいはマンションの規約で定めた割合ということになります。
いずれにしても土地の権利の割合が小さいので、境界線についての関心も低いということになります。
実際に、マンション管理組合との立会で、境界線自体についてもめたというのは私の経験ではありません。

この関心の低さが、境界について争いにはなりにくい。
しかし、その反面、境界立会に積極的に応じてくれないということもあります。

③投資用マンションの場合は、現地に所有者は住んでいない。
投資用ワンルームマンションのように、貸し出すことを目的にしているマンションです。
それで管理事務所がない。管理会社もわからない。
ということになると登記情報から所有者を調べて、部屋を会社の事務所として使っているとか、
近くに住んでいる人に伺って事情を聴取りしていくということになります。
管理会社はどこか、理事長は誰なのか、理事会は行っているのかなどです。

投資用の場合は、現地に住んでいないことから、理事会のときに境界立会をするということが多いです。
なので理事会のタイミングを逃さないことも大事です。

④共有か敷地権か
共有か敷地権かというのは、土地の登記の形態の違いだけです。
共有の場合は、通常の登記記録と同じです。
10人の共有であれば、10人分の所有権の移転や抵当権の設定、抹消などの経緯が記載されます。
仮にマンションが100部屋あると、100人分の権利関係が記載をされるので、
土地の登記記録がすごく煩雑になってしまうということがあります。

そこで昭和58年の法律の改正で、敷地権の登記が認められるようになりました。
敷地権というのは、土地の権利はそのマンションの部屋の権利と一体化(連動)してますという意味です。
土地の甲区の欄を見ると「〇〇マンション所有権敷地権」のように書かれています。
この場合には、土地の権利は各部屋の権利と一体化(連動)してるから、
土地の権利関係についてはマンションの部屋の登記を見てくださいということです。
101号室の権利がAさんからBさんに移転したら、土地の登記には何も書かないけど土地の権利も移転しているということになります。

これで土地の登記がスッキリするということになりました。
しかし調査するときに建物の登記も見ないといけないので、
調査する側からすると手間が多くなるということになります。

⑤理事会を通さなければ印鑑が押せない場合
マンションとの境界確認では、理事会のときに集まった理事で境界を確認をする。
あるいは境界確認書の印鑑は、理事会を通してから押印するということがあります。

問題なのはマンションの理事会は、どのくらいの頻度で行われるかです。
理事会開催回数の調査をしたデータがあるので紹介します。
1ヶ月に1回の開催が全体の36.5%です。
2ヶ月に1回が24.5%
3ヶ月に1回が24.3%
半年に1回が8.0%
1年に1回が3.9%
ほとんど開催していない、開催したことがない、不明を合計すると1.9%です。

理事会のタイミングをはずすと、かなり厳しいというは分かると思います。

 

3つ目は、マンション管理組合との境界立会までの流れ
それでは実際に、現地の調査測量から、管理組合の理事長さんとの境界立会までどのように進めていくかです。

まずは、測量する前のご挨拶からです。
エンタランス付近にある管理事務所に伺います。
明るく元気よく「隣の土地を測量をすることになりました。ご挨拶に来ました~」みたいな感じです。
雑談をしながら「管理事務所の方って、何曜日に勤務されてるんですか?」とか
「できれば理事長さんにも直接、挨拶をさせていただきたんですけど。理事長さんのお名前を教えていただけますか」など
情報の聞き取りをしていきます。
管理事務所が不在であれば、管理事務所のポストに測量の案内文と、タオルなど粗品を入れます。
このときに管理組合のポストが用意されていれば、管理組合にも測量の挨拶文を投函する。
そして管理事務所付近に貼ってある管理会社名と連絡先を確認します。

通常この時点では、理事長の名前はわからないし、管理組合のポストは用意されていないことのほうが多いです。
そして事務所に戻ったら、管理会社に測量のあいさつの電話を入れる。
管理会社の担当者あてに、測量の挨拶文と名刺、粗品を郵送します。

そして調査、測量がある程度進んだ状態で、境界の立会依頼をします。
この時点で、管理組合の理事長と直接コンタクトが取れる状態になっていれば直接理事長に立会依頼をしてもいいと思います。
でもほとんどの場合は、理事長と直接コンタクトがとれません。
管理事務所も管理会社も、理事長の名前は個人情報という理由で教えてもらえないことが多いです。

なのでほとんどの場合は、ここで管理会社を通して、管理組合理事長さんに連絡をします。
そして境界立会の当日は、管理会社の担当者と管理組合の理事長さん、場合によっては理事数名と境界立会をすることになります。

やはりマンションの境界立会は、スムーズに行くこともあるけど通常よりもだいぶ時間がかかることが多いです。
早く、早く行動をしていかないとマズいということになります。
後手に回るのではなくて先手を打っていきます。

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