隣の人と境界の確認ができない

隣の土地所有者さんと境界線の確認をするのに障害となることがあります。

 

隣の人が遠隔地に住んでいて現地立会に来てくれない。

忙しい。面倒くさい。

境界について、全くの無関心な人もいます。

境界線について、問題はないけど書類に印鑑を押すのが怖い。

隣の人と人間関係の問題があり、感情的に応じてくれない。

隣の人と境界線の主張が相違する。

隣の人が登記記録に記載されている住所に住んでいない。所在が不明である。

このように、境界線の確認をする上で障害となることがあります。

 

隣の人が遠隔地に住んでいて現地立会に来てくれない。

実は結構、遠い人でも、ほとんどの場合、現地に境界確認に来てくれます。

ご自身の大切な財産である土地について、関心があるからだと思います。

でも、忙しい方はなかなかそうもいきません。

そのような場合は、境界を確認するための資料、公図や測量図、既存の境界標や塀の位置が分かる写真を郵送いたします。

場合によっては、境界線の説明を動画で撮影してCD等を送付することもあります。

今までは、ほとんどこれで境界確認はできております。

 

忙しい。面倒くさい。

こういう人もいます。この場合は楽です。

夜でも、朝でも、日曜日でも相手の都合に合わせれば上手くいきます。

境界でこじれる可能は少ないです。

 

境界について、全くの無関心な人もいます。

これは、資産価値のない土地や何も利用されていない土地に見られます。

道路に面していない囲繞地であったり、通路の部分に名義が残っている、長年空き地で何も利用していない。中には、相続登記もされずに放置されることもあります。

このような場合は、現地に来てもらうのは難しいですが、写真や図面で説明をして対応しています。

 

境界線について、問題はないけど書類に印鑑を押すのが怖い。

昔は実印で印鑑をもらわないといけない書類もあったんですけど、今は隣地の人の書類は、ほぼすべて認印で大丈夫です。

「お爺ちゃんの代から書類にはハンコは押すな!」と言われているという人もいました。

書類について十分に説明します。書類の内容、使用目的、提出先を十分に説明してご理解をいただくようにしています。

 

隣の人と人間関係の問題があり、感情的に応じてくれない。

人間関係の修復というのは、私たちにはできません。

ただできるのは、十分に話を聴くことだけです。

最初は感情が高ぶっていても、次第に落ち着いてくることが多いです。

 

隣の人と境界の主張が相違する。

この場合は、相手の主張を十分に聴いて、場合によっては相互に歩み寄って、境界を決める方向に進めていくのがいいと思います。

境界の紛争については、経済的にはそんなに大きい問題ではない。

例えば、33センチの幅で、境界線の主張が相違するといった場合だとします。

この33センチの幅で、長さが10メートルとすると面積で3.3平方メートルそう1坪なんです。

坪単価50万円の土地で50万円の価値、仮に坪単価が100万円だとしても、200万円だとしてもです。

境界争いで筆界特定制度を使ったり、境界確定訴訟をした場合、測量費用、弁護士費用、時間的なコストを考えれば全く、経済的にはまったく割に合わないんです。

ですから、できるだけ当事者同士の話し合いで、境界を決めるのがベストだと思います。

 

隣の人が登記記録に記載されている住所に住んでいない。

そういった場合、近隣の人への聞き込みや固定資産税などの資料、住民登録などから追跡調査をしますが、それでも所在が不明となる場合もあります。

固定資産税の記録は、市町村によって閲覧ができる場合とできない場合があります。

住民票は、保存期間が5年です。5年以上前に他の市町村に住所を移転している場合は、追跡調査ができません。

住民票などは、厳密な個人情報なので、第三者が住民票を請求すると、正当事由があっても請求された本人に市役所から、「土地家屋調査士○○さんがあなたの住民票を取得しました」と通知が行く場合があります。

それで帰って隣地の所有者の感情を逆なでする可能性もありますから、個人情報の調査は細心の注意を払ってする必要があると思います。

 

 

とは言っても、様々な理由で、境界を確認できない場合もあります。

その場合の対処方法を三つお伝えします。

 

 

一つ目は、分筆または地積更正の土地の登記を申請します。

もちろん申請をするためには、事前に法務局の登記官と打ち合わせが必要です。

どうしても立会に応じない人や境界は認めるが印鑑は押したくない人に対して、法務局から境界立会を求める通知が行きます。

その通知は、はがきで1~4のいずれかに〇をつけて回答するようになっています。

  1. 隣地との境界に意義がないので立ち合いません
  2. 指定の日時に指定の場所に立会します。
  3. 指定日時に立ち会うことができません。
  4. 都合がつかないため、何月何日何時に調整でお願いします。

 

その通知に対して、隣地の所有者が

 

  1. 隣地との境界に意義がないので立ち合いません
  2. 指定の日時に指定の場所に立会します。
  3. 指定日時に立ち会うことができません。
  4. 都合がつかないため、何月何日何時に調整でお願いします。

 

のいずれかに〇をつけて返信するようになっています。

 

公的機関からの通知ですから、今まで立会に応じなかった人も何らかの反応がある可能性があります。

仮に、隣の所有者が、これも無視した場合には、その申請の通り登記するか、申請が却下されるかは登記官の裁量によるところもあります。

先日、隣地が空き家になっていて、近隣の聞き込みでもう一年以上も家に帰ってきていないという事例がありました。住民票の登録の住所は空き家を住所地にしていました。

当然、法務局の通知も回答なしで立会日にもこないという結果でした。

結局、法務局の登記官の判断で、申請の通り分筆登記をしていただきました。

 

二つ目は、売却にかかる範囲だけを分筆する

これは、法務局の地積測量図や土地区画整理の確定図などの資料と現地の状況により境界線については明らかである。

でも、売却するにあたって、隣地の土地所有者の境界の確認書が必要という場合には、境界確認が出来ていない土地と30㎝程度を分筆することで切り離す。

そういう方法を使う場合もあります。

もちろんこの場合は、前述の法務局からの立会通知が発送されることもあります。

 

三つ目は、筆界特定制度を利用する。

筆界特定制度は、法務局に申請をします。

筆界特定登記官が、資料や現地測量の結果に基づいて機械的に境界を判断します。

筆界が特定された後は、資料が法務局に保管されて、誰でも資料の閲覧は可能になります。

その筆界に基づいて、分筆登記、地積更正登記をすることも可能です。

隣地の所有者が行方不明。境界立会に応じない。また境界の主張が相違する。

このような場合に、有効な方法です。

期間が1年以上かかる。多額の費用が掛かる。境界が確定しても境界標を設置できるわけじゃない。

といったデメリットがあります。

筆界特定制度が施行されてから10年以上が経ちますが、私はまだ一度も申請したことはありません。

この筆界特定制度を使うのは最後の手段であると思います。

過去に、5回くらいは、この筆界特定制度を使いそうになりましたが、うまく切り抜けました。

できるだけこの制度を使わずに、業務を完了するようにしています。

 

 

 

境界線が確認できないと、分筆ができない。売却ができない。売却しても相場より安い金額でないと売却できない。

 

 

そうならないために、私たちは、あらゆる可能性を考えながら、境界確認をしています。