境界について資料調査の方法を土地家屋調査士が教えます

隣の人が測量をして境界線の確認を求められた。
でも、説明をされてもよくわからないし、お隣の人が依頼した土地家屋調査士の言うとおりに境界線を認めて良いのでしょうか。

土地家屋調査士の国家資格を持った人であれば、中立の立場で境界を判断します。
依頼者が有利になるように測量をして境界を判断することはありません。

とは言っても、よくわからないままに境界を確認するのもどうかと思います。

そんなときには、ご自身で資料を調べてみてはいかがでしょう。

今回の動画を見ていただければ、土地の境界線について自分で調べる方法がわかります。ぜひ最後までご覧ください。

どーも(^^)
開業20年、土地家屋調査士、杉山です。
このチャンネルでは、土地家屋調査士としての経験、知識、考え方をお話しています。
最後に視聴者さんのコメント欄の質問にランダムで答えますので最後までお付き合いください。

それでは3つのポイントでお話します。
1つ目は、持っている資料を確認しましょう。
2つ目は、法務局の資料を確認しましょう。
3つ目は、自治体や他の資料も確認しましょう。

まずは、
1つ目は、持っている資料を確認しましょう。
土地を購入した時に、測量をしていて渡されている図面はないか。
あるいは、古い図面が残っていないかを確認しましょう。

あとは、建築関係の書類の中に敷地を測量した図面が入っています。
これは建物を建築する上で、建ぺい率、容積率を計算します。
そのために建物敷地の面積を測量する必要があります。
ただし建築のために行う測量の多くは、ブロック塀や生け垣、既存の杭を測量した現況測量です。
隣地の所有者さんとの境界線の確認をしていない測量ですので、この数値が絶対ということではなく、参考程度の図面ということになります。

2つ目は、法務局の資料を確認しましょう。
法務局で確認をできる資料としては、
公図、旧公図、登記事項証明書、閉鎖登記簿謄本、地積測量図などがあります。

現在の公図、登記情報、地積測量図などはインターネットでも、資料をダウンロードできます。
https://www1.touki.or.jp/
インターネット登記情報提供サービスで資料の取得は、法務局の窓口と比較して手数料は安いですが、認証文と公印はありません。
法務局の窓口で取得する資料は、インターネットと比べると手数料は若干高いです。
そして認証文と公印が押されます。
「登記記録に記録されている事項のうち現に効力を有する部分を証明したもの」
〇〇法務局登記官〇〇 公印
といった感じです。

ご自身で、資料を確認する目的であれば、まずはインターネットで入手することをオススメします。

各、資料についての説明です。
①公図
公図は、土地の形状と地番の配列を図示したもので、正式には「地図」または「地図に準ずる図面」といいます。
「地図」は、精度の高い測量をもとに作られた図面で、境界を判断する上で信用できるものです。
「地図に準ずる図面」は、古いものは明治時代の測量をもとに作られた図面で、現代の測量とくらべるとかなり精度は低いです。
土地の地番の位置関係や土地の形状を判断する程度の資料です。
ただし、境界(筆界)というのは、後から変更されるものではなくて、あくまで原始的な境界を探求するということになります。
そう考えると「地図に準ずる図面」は、精度は低いですけど境界を判断する上では重要な資料ということになります。
現在の公図は、インターネットでダウンロードするか、もしくは日本全国の法務局で入手できます。

②旧公図
公図というのは、古いものは明治時代に作られていたというお話をしました。
その当時は、和紙で作成をされていました。
その後、透明なポリエステルフィルムに書き換えられて、今現在はコンピュータでデータとして管理されています。
そうなんです。
公図は、何度も書き換えられながら現在の状態になっています。
その書き換え前の公図を旧公図と言います。
この旧公図も、入手することができます。
通常は、旧公図まで調査をしません。
現地の土地の形状と公図の形状が違う。
土地の境界線に疑義がある。
そういう場合には、旧公図を調査します。
なぜ調査をするかと言うと、何度も書き換えられている段階で、間違いが起こっている可能性があるからです。
何らかの疑義がある場合には、旧公図まで確認をします。
旧公図は、インターネットでは入手できません。
その管轄する法務局で調査する必要があります。
埼玉県川口市の不動産であれば、さいたま地方法務局川口出張所で調査をします。
境界線について疑義があるという場合には、旧公図を調べましょう。

③地積測量図
地積測量図は、地積更正登記や分筆登記などで法務局に提出される図面です。
作成された年代によって、記載されている内容、測量の精度、信ぴょう性がだいぶ違います。
しかし境界の辺長、境界標の種類、地積の計算や境界を判断する上で、とても大事な資料となります。
地積測量図があるかを確認する方法としては、登記情報の表題部(一番先頭)の部分の「原因及びその日付」の欄を確認します。
「③錯誤」や「③○番○、○番○に分筆」あるいは「○番から分筆」このような記載がされている場合には、地積測量図があります。
これらの記載があるということは、地積更正登記、分筆登記がされているということです。
そのときに提出された地積測量図が存在します。

地積測量図は、インターネットでもダウンロードできます。
もちろん法務局の窓口でも請求できます。
また、国土調査や区画整理などで閉鎖された特殊な地積測量図を請求するには、
インターネットではなく管轄する法務局の窓口で請求する必要があります。

地積測量図は、境界の判断材料として重要な資料です。
インターネットまた法務局で入手してください。

 

3つ目は、自治体や他の資料も確認しましょう。
①公道に接している土地であれば、公道の管理図面を入手します。
国また都道府県あるいは市区町村で管理しています。
広い国道や高速道路でない限り、市区町村で管理していることが多いので、
まずは確率の高い市区町村からあたってみるのが良いです。

②固定資産税課の公図
公図というのは土地の形状と地番の配列がわかる図面です。
法務局で管理していますけど、法務局とは別に市区町村の固定資産税課でも管理しています。
法務局の公図と固定資産税課で管理している公図が、微妙に違います。
通常は、固定資産税の公図までは確認しません。
しかし、土地の形状が、現地と公図で違いがある。
境界線について疑義があるという場合には、固定資産税課の公図も確認します。

③建築概要書です。
建物を建築するのに、建築確認を受けるんですけど、その申請内容の概要を記載した書面です。
その中に敷地を測量した建物の配置図がありますので、参考にすることができます。
敷地の辺長などが書いてありますが、測量に際して隣地との境界確認を行っているとは限りません。
参考程度の図面ということになります。
市区町村の建築指導課などで入手できます。

④位置指定道路などの図面です。
前面道路が私道の場合は、まずは私道の道路の扱いについて調べます。
市区町村の建築指導課等で教えてもらえます。
法外道路なのか、但し書き道路なのか、位置指定道路なのか道路の扱いを調べます。
法外道路は、建築基準法の規定外の道路で、接していても建築はできません。
管理図面も、公共用地でなければ、ないということになります。

但し書き道路というのは、建築基準法の道路ではなくて建築している敷地が空地に接していることで建築を認めるという再建築不可を救済する規定です。
但し書き道路の場合は、市区町村によって図面などの資料を確認できる場合もあるし、できない場合もあります。

位置指定道路というのは、建築基準法42条1項5号により一定の基準をクリアして特定行政庁から指定を受けた道路で、2メートル以上接することで建物を建築できる道路です。
位置指定道路であれば、位置指定図といって道路の幅員、隅切りの形状、延長などの数値が確認できる図面を入手できます。

⑤区画整理
区画整理を行っている場合には、その図面を閲覧できます。
ただし、昭和40年代とかあまりに古い図面だと保管されていないこともあります。
区画整理がされているかどうかは公図や土地の登記情報を見るとわかります。
公図の種類の欄に「土地区画整理所在図」と記載されている。
あるいは土地の登記情報で、表題部の原因およびその日付の欄に「○年○月○日土地区画整理による換地処分」のように記載されています。
分筆されている土地で「○番から分筆」のように記載されている場合には、分筆前の登記情報で区画整理がされているか確認をします。
道路が碁盤の目のようになっていて、整然と区画されている地域は、区画整理をされている可能性があります。
区画整理がされているかどうか確認をして、市区町村の区画整理課等で図面を入手しましょう。

⑥国土調査法による地籍調査の成果
昭和26年から日本各地で、地籍調査による測量が行われています。
進捗状況としては、令和元年度で52%の土地で地籍調査が完了しています。
この国土調査の測量成果についても調査することができます。
ただし昭和40年以前とか古い測量成果については保管されていないこともあります。
公図を確認して、種類の欄に「法務局作成地図」とか「地籍図」の記載がある場合には、地籍調査が行われています。
また土地の登記情報を見て、表題部の原因及びその日付の欄に「③錯誤、国土調査による成果」とか「③錯誤、地図作成」などの記載があると地籍調査をしているということになります。
あとは民々境界を除いた道路境界だけ、国土調査法の地籍調査を行っていることがあります。
図面等の資料は、市区町村の道路管理課また法務局で確認できることがあります。

自分でできる資料調査についてお話しました。
資料の調査については、インターネットでできる部分もあります。
土地家屋調査士などプロの人に、調査を依頼をしても良いですが、
まずはご自身でチャレンジしてみてはいかがでしょう。

 

それでは最後に視聴者さんの質問に答えます。

Q:ラフランスさん
地主さんや不動産業者さんから分筆を依頼されたときに注意することを教えてください。
A:
良い質問です。
いくつかあるうちの3つの注意点をお話します。
①分割の杭を入れるときの注意です。
確定測量済みの土地を分筆をするのに、分筆の杭を入れるときの注意です。
そのときの隣地の所有者さんの了解をもらうということです。
お声がけして勝手に杭をいれたとか言われないように注意が必要です。
依頼者さんは、塀の工事をするからすぐに境界を入れてほしいと言われます。
しかし、あとでトラブルにならないように注意が必要です。

②分筆の案の提示について
分筆登記をする上で、分筆の案を何通りか提示することがあります。
最終的にどの図面で分筆をするのかの確認を間違いなくすることです。
トラブルとしては、確認の齟齬で違う図面で分筆の登記をしてしまう。
違う図面でブロック塀などの工事をしてしまう。
ということがありえます。
最終的に分筆する図面の確認については、
口頭だけではなくメールなど履歴に残る形で行います。

③数値についての注意です。
隅切りであったり、間口であったり、面積についての数値に注意しています。
隅切りが3.000mであれば、必ず3メートル以上確保できるように計算します。
測量の計算をするときに、測量計算ソフトで隅切長が3.000mで計算すると四捨五入(丸め誤差)で、図面上は2.999mになってしまうことがあります。
これはダメです。
私の場合は、測量計算をする時に3.001mで計算して必ず計算結果が3.000以上になるようにします。
間口も同じです。
間口7メートルと依頼者から指定されたら6.999mにならないようにする。
面積も100㎡であれば、99.99㎡ではダメです。100.01㎡とか100.02㎡で必ず100㎡以上になるように計算します。

以上が、分筆登記の注意事項です。