【地積測量図】古い図面の信ぴょう性はあるの?

今回は、法務局にある地積測量図のお話です。
古い地積測量図は、どの程度の信ぴょう性があるのか心配ですよね。
地積測量図は、昭和35年の不動産登記法の改正から、
分筆登記や地積更正登記などの登記手続きをする際に提出されています。
その後、法律の改正を繰り返して、現在のような精度の高い測量図が備え付けられています。

今回は、年代別にどのように地積測量図が作成されたのかをお話します。
この動画を見ていただければ、地積測量図の作成年月日を見て図面の信ぴょう性、記載されている内容、その当時の特徴が分かります。
ぜひ最後までご覧ください。

開業20年、土地家屋調査士、杉山です。
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最後に得点パートとして視聴者さんの質問に答えますので最後までお付き合いください。

それでは地積測量図の特徴について、作成年月日から4つの段階に分けて説明します。
第1段階は、昭和36年~昭和52年の地積測量図
第2段階は、昭和52年~平成5年の地積測量図
第3段階は、平成5年~平成17年の地積測量図
第4段階は、平成17年~現在の地積測量図

それでは、
第1段階は、昭和36年~昭和52年の地積測量図
この時代の地積測量図の特徴です。
昭和36年頃から地積測量図が作成されるようになりました。
今現在の測量と比べるとかなり精度は低いです。
寸法は「間」、面積は「坪」での表示がされていることもあります。
1間は1.8181・・・mで、1坪は3.3057・・・㎡です。
辺長の記載のない図面もあります。
メートル単位で記載されているものでも、寸法について、5センチ、10センチの単位で書かれているものもあります。
中には机上で作成したと思われる公図をスケールで読みとって作成されているものもあります。
縮尺について200分の1、300分の1とばらつきがある。B5で作成されていることが多い。
図面にコンクリート杭やプラスチック杭など境界標の記載がなくて、現地に境界標がない場合が多いです。

測量は平板測量で行われることが主流でした。
平板測量というのは、三脚を取り付けた平板の上に図面を張り付けます。
一人は測量するポイントにポールを立てます。
もう一人は、平板の上に貼り付けた図面の測量するポイント(ポール)に線を引き、巻き尺で目標までの距離を測ります。
これを繰り返すことで測量をしていきます。

精度が低くて信憑性に欠ける図面もありますが、精度が高くて信用できる図面もあります。
信頼度にばらつきが多く、調査測量をして個別に判断するということになります。

 

第2段階は、昭和52年~平成5年の地積測量図
この時代の地積測量図の特徴です。

地積測量図に、コンクリート杭や金属プレートのように境界標の記載がされています。
以前の平板測量から徐々にトランシット(光波測距儀)による測量が行われるようになって精度が高くなっています。

隣地との境界立会いを行って作成されている図面が多いですけど、未立ち会いの図面もあるようです。
特に公共用地との境界確認を省略されていることが多い感じがします。
公共用地との接続する部分の数値が合わなくて、市区町村で道路境界を確定した経緯を調べてみますと、
道路境界を確認しないで、おそらくその当時の現況の側溝などで計算して作成したと思われる地積測量図があります。

この頃の地積測量図は、バインダーって簿冊で管理されていました。
法務局で地積測量図の閲覧を請求すると閲覧室というのがあって、そこに通されます。
職員の人がその地積測量図の簿冊を持ってきて渡されます。
そして閲覧する人が、必要な地積測量図をバインダーから外して、自分でコピーしていました。
そのためにこの当時は、法務局から地積測量図が紛失したり、あるいは改ざんされるということもあったようです。

これまでの手書きの図面から、コンピュータで測量計算をして、図化機で図面を作成するようになっています。
コンピュータと言っても今のパソコンと違って、MSーDOSと言って単純な計算をしかできないものでした。
図化機は黒インクのペンプロッターを使って図面を書いています。
図化機がペンを持って作図していくんですけど、図面を書くのにすごく時間がかかったのをお覚えています。
複雑な図面だと1時間から2時間くらい時間がかかっていました。
今は、プリンターで数秒で印刷できるので、便利になったと思います。

面積計算については、三角形の底辺✕高さ÷2で計算する三斜求積が主流です。
中には三角形の計算が、ピタゴラスの定理でチェックすると合わないものもあります。
a2+b2=c2で辺長を計算できるんですけど、計算が合わないことがあります。
面積が合わないところについてはチェックしてみても良いと思います。

以上が、昭和52年~平成5年の地積測量図の特徴です。

 

第3段階は、平成5年~平成17年の地積測量図
私がこの業界に入ったのが平成5年です。
そして平成13年に独立開業をするわけですけど、
当時の記憶をたどりながら、地積測量図の特徴についてお話をします。

トータルステーションによる測量が主流になって、測量の精度が飛躍的に高くなったといえます。
隣地の人の署名捺印をいただいた立会証明書、公共用地との確認書を添付して分筆や地積更正登記がされるようになりました。

地積更正の登記については、隣地所有者の実印の押印と印鑑証明書を添付した境界確認書の提出が必要でした。
地積更正登記を避けるためもあって、分筆登記については残地差し引き計算で行われることがほとんどです。
残地差し引き計算にすると、必ず分筆後の面積の合計は、元の登記簿と一致することになります。
残地差し引き計算というのは、例えば5番の土地が登記簿上300㎡であって、実測が400㎡あるとします。
この場合に半分の200㎡を分筆して、5番2とします。
その場合に5番1の土地の計算は、登記簿面積の300㎡ー200㎡=100㎡となります。
実測が200㎡あるにも関わらず、登記面積は100㎡ということになります。
さらに5番1の土地を残置差し引き計算で分筆すると実測面積と登記簿面積の差は大きくなります。
これが分筆登記の残地差し引き計算です。

平成5年~平成17年の地積測量図の特徴についてでした。

 

第4段階は、平成17年~現在の地積測量図
この時代に大きな改正が行われました。
この改正内容も含めて、地積測量図の特徴についてお話します。

求積の方法が今まで三角形をつくった三斜法からXYの座標値を使った座標法が主流になっています。
これによって地積測量図から境界の現地復元能力が高まりました。

地積測量図はコンピュータで管理されるようになる。
現在ではインターネットで地積測量図をダウンロードできるようになっています。
これで、地積測量図の紛失、改ざんの心配もなく、誰でもかんたんに手軽にネットで地積測量図を入手できることになっています。

分筆や地積更正登記を申請する際には、境界標の写真を撮影して法務局に提出しています。
そのために地積測量図の作成時点での境界標の種類と現地の境界標は必ず一致しています。
地積測量図に、金属プレートの記載があれば、現地でも金属プレートということになります。
この時代の前、写真の提出がないときはどのような感じかと言うと、
分筆や地積更正の登記を申請してから境界標を設置することもあったようです。
そうすると地積測量図の記載はコンクリート杭なのに現地には金属プレートが入っている。
あるいは境界標が入っていないということがありました。

分筆の場合は、全筆求積することになりました。
これまでの残地差し引き計算の分筆登記は原則として認められません。
残地求積が認められるのは、広大な土地5000㎡のうちのわずか一部1㎡だけを分筆したいと言った至極まれなケースだけです。
基本的に残地求積はできないということになります。
全筆の求積のため分筆の登記に際して、面積の合計が公差の範囲(公的に決められた誤差範囲)を超える場合には、分筆と地積更正登記をセットで申請します。
地積更正登記は、これまで隣地との境界確認で実印の押印をして印鑑証明書が必要でしたが、
この時代では分筆登記と同じように、認印の立会証明書で地積更正登記ができるようになっています。
公差範囲内の分筆登記では法務局の現場調査を省略することもありますが、地積更正登記については、法務局の現場調査が入ります。

地積測量図の作成については、原則世界測地系の座標値を使用することになっています。
世界測地系の座標値というのは、日本全国を19の座標系に分けてそれぞれ座標系の原点X=0.00、Y=0.00をもうけて座標値で管理しています。
世界測地系の座標値のすごいところは、X、Yの境界点の座標値さえわかれば、かんたんに現地でその位置を復元できるということです。
測量の基準点が、学校であったり、公園であったり、道路上などの公共用地にたくさん設置されています。
その測量の基準点から、境界点の位置を正確に復元することができます。
境界標が動いてしまった。あるいは境界標がなくなってしまったという場合でも、正確な位置を復元できるので安心です。

以上、地籍測量図の年代別の特徴についてお話をしました。

 

最後に視聴者さんからの質問に答えます。

Q:まなぶたろう土地家屋調査士見習いさん
新しく土地家屋調査士事務所に入社しました。
帰ってから自分で実務について勉強したいのですが、まず何から勉強を始めると実務についていけるようになりますか?

A:この業界に入ったのがおおよそ30年前なんですけど、とにかく言葉がわからくて苦労をしました。
一緒に働いている人、役所の職員さん、お客様との話で出てきた言葉について、調べてみるというのはどうでしょうか。
不動産用語集とか法律用語辞典などを購入して、あとはインターネットで、わからない言葉は徹底的に調べる。
あと携わった仕事について徹底的に勉強する。
地目変更とか、建物表題とか、分筆とか仕事でやったことを勉強すれば興味がわきますし、
興味があるときは、そのままにしないで調べる勉強するというので良いのではないでしょうか。
宅地建物取引士を勉強するのも良いと思います。
不動産に関する幅広い知識を勉強できるのですごく役に立ちます。