土地家屋調査士の事故例と損害請求【登記の間違い、器物破損ほか】

仕事のミスは本当に辛いです。
もう関係者からボコボコにやられます。
芸能人の不倫会見くらいの地獄です。

土地家屋調査士の場合は、職務上損害を与えてしまった場合の賠償責任保険があります。
今回は、その保険の資料から土地家屋調査士の業務でミスをしてしまった事故例と損害額についてお話をします。
具体的な事例と保険会社が支払った損害額がわかります。
ぜひ最後までご覧ください。

それでは今回は、3つの事故例を紹介します。
1つ目は、建物表題登記の誤りに対する登記の是正事例
2つ目は、分筆位置の過誤により建築基準法上、住宅建築不可となった事例
3つ目は、土地家屋調査士が器物破損をさせた事例

それでは
1つ目は、建物表題登記の誤りに対する登記の是正事例
土地家屋調査士が医院と居宅の区分建物表題登記の依頼をされたが、
一棟の建物(非区分建物)として建物表題登記をしてしまった。
ちなみに区分建物というのは、分譲マンションの形式のように各部屋ごとに登記することができます。
今回は、居宅と医院の部分を別々に登記しようとしたのが、
一つの建物として登記されてしまったということです。

その登記の誤りによる請求額です。
所有権抹消登記:27,990円
所有権保存登記:702,700円
建物区分登記:79,950円
合計:810,640円

資料では、土地家屋調査士事務所内の連携のミスということになっています。
依頼者は区分建物として登記を依頼したが、土地家屋調査士事務所の連携不十分に基づくものであり、
土地家屋調査士の過失は明らかであるとされています。

請求額の全額810,640円が損害額として認定されています。

資料には、詳しいことが書かれていないのでわかりませんが、
疑問として委任状をどうしたんだろうということがあります。
・ほぼ白紙の状態で委任状をもらって土地家屋調査士が後から書き込んだのか
・申請人が委任状の内容をよく確認しないまま署名捺印をしたのか
・委任状自体を土地家屋調査士事務所で作成してしまったことも考えられるのかと思います。

申請人としては、区分建物にすることが
税制上の都合であったり
将来、医院の部分を法人名義にしたいとか
あるいは医院の部分だけ長男に譲りたいとか
その辺の思惑があったのでしょう。

土地家屋調査士としては、
・事務所内の連携を徹底する。
・申請意思の確認をきちんと行う。
・委任状などの必要書類はできるだけ空欄を作らないで署名捺印をいただく
ということになろうかと思います。

2つ目は、分筆位置の過誤により建築基準法上、住宅建築不可となった事例
土地家屋調査士が土地の分筆登記をするに当たり、
旗竿地(路地状敷地)の通路部分の幅を1.9mで分筆した。
その位置に擁壁が施工された。
分筆した土地は建築基準法上の基準をクリアしていないため、売買自体ができない状態になってしまった。

不足分の土地を地主より購入する土地代、再分筆費用として2,000,000円が請求された事例です。
建築基準法では、建築物の敷地は幅員4m以上の道路に2m以上接していないと建物を建築できないということになっています。
この基準をクリアしていないために、建築できない、売買できない、融資もできないという状態に陥ったということになります。

こんなこと起こるのか?と思うかもしれません。
でも起こりえます。
土地家屋調査士試験は、民法、不動産登記法の知識がメインです。
しかし、土地家屋調査士の実務では、農地法、都市計画法、建築基準法など不動産に関する全般的な知識が実務では要求されます。
もしも、不動産に関する知識が乏しいまま実務を行うと、この事例のようにまったくトンチンカンな仕事になってしまいます。

土地家屋調査士試験に合格するのは大変なことなんですけど、
試験の知識だけでは、実務ではまったく通用しないということになります。
この事例の土地家屋調査士さんも半泣きになるくらい、周りから責められたと思います。
再建築が不可になる土地を作ったわけですから、かなり痛いミスです。

試験で求められる知識と実務で必要な知識は違います。

試験合格後もしっかりと勉強する必要があります。

3つ目は、土地家屋調査士が器物破損をさせた事例
①測量中に自動車を破損させた事例
測量作業をしていたところ、作業の邪魔となったロッカーを移動し置いたが、
ロッカーが倒れてしまい自動車に当たり破損させた。
請求額として
修理代:722,225円
代車代:278,755円
合計:1,000,980円
が請求されました。
修理代、代車が高いという感じはいたします。
高級車だったのか当てた持ち主が悪かったのかはわかりません。

測量する上で、境界探索、設置、視通の邪魔になるものを移動させることがあります。
注意したいところです。

②境界標の設置の際に水道管を破損させた事例
コンクリート杭を埋設しようとしたとことろ、地中の水道管を破裂させた。
水道管の修理だとして
137,382円が請求されています。
私も2回、水道管を破損させた経験があります。
突然、水が吹き出してきてスゴイ焦りました。
現場であちこち電話するけど、対応してくれる水道屋さんがなかなか見つからないで大変でした。
この仕事を長くしていると経験はあるんじゃないかと思います。
近くに水道メータやガス管の目印があったら、あまり力を入れずに優しめに掘るとか、
注意したいところです。

③測量中に他の業者のトランシット(測量機械)を破損させた事例
境界杭の距離をテープ(巻き尺)で測定をしていたところ、
誤って他の業者のトランシットに接触して転倒させて破損させた。

請求額として、
トランシット修理代:244,125円が請求されています。
テープ測量のときは、事故が起きやすいです。
この事例では、トランシットの物損事故ですみました。

歩行者や、自転車、自動車などの場合は、大事故になりかねません。
自転車、自動車の車輪にテープが巻き込まれたら大変です。

紹介した事故例の他にも、
危険な場面はいくらでもあります。
トランシット(測量器械)から離れている間に子供が器械を触っていてヒヤリとした経験。
金属鋲をアスファルトに打設するのに誤って金属鋲を飛ばしてしまいヒヤリとした経験。
交通量の多いところで、作業に夢中で周りが見えなくなりヒヤリとした経験。

十分、注意が必要だと思います。

以上、参考にしていただければ幸いです。